日本の武士道と西洋の騎士道の違い

武士道は自身の名誉や意地を重んじる。騎士道は正義を重んじる。戦争において武士道では敵への降伏を拒否しての自殺があるが騎士道にはこれがない。代わりに死ぬまで抗戦することを選ぶ。キリスト教が自殺を禁じているためである。騎士道はキリスト教の神との誓いを基本とした宗教戦士の趣がある。それに対して武士道においては、孔子の道を説く儒教、特に朱子学。仏教、特に禅宗、それに八幡大菩薩などの神道系のカミの混成系である。したがって武士の宗教は宗教戦士ではなく、自らの精神性を高めるための根拠となっている。武芸者は「芸」、殺人芸の職人でもある。常に生と死の狭間を生きる存在として大菩薩峠の机竜之助、子連れ狼の拝一刀、丹下左膳などニヒルなヒーローでもあった。

また孫子の兵法や明治維新に影響を及ぼした陽明学などの戦略論や政治学を学んだ戦争の技術者としてのサムライたちは、明治の政治家や軍人となり、近代の三菱財閥の岩崎彌太郎や、渋沢栄一など日本の実業家たちにも影響を与えている。