あちらとこちら2  マレビトたち

アカマタ・クロマタ
アカマタ・クロマタ

日本には不思議な祭りがある。ある日突然、あちらの世界からとんでもない怪物がやってくるのである。民俗学者折口信夫はこの怪物たちを「マレビト」と呼んだ。里の人にとってはおどろおどろしい魔物であるが、実は里に福をもたらすカミであった。現代の常識では、カミは、立派な人格を持った全知全能の存在で、それ故、お祈りすれば願いを叶えてくれる存在であると思われているが、歴史的にはそうではない。その大部分は、わがままで凶暴、楯突けば祟る存在なのだ。実際、祭りに登場するマレビトたちも、ヒトを襲うことがある。襲われたヒトは、意外にも幸や福をいただくことになる。マレビトとは、あちらの力である。ヒトはそれ以外にもあちらの力をいただいて生きている。前回の1で述べたように、植物たちは、地上をこちらとすれば地下の養分、あちらの力ををいただいて生育し、実や花を地上のこちらに届け、鉱物や石油は地下、あちらの力そのものである。ヒトは、言葉や絵を通して過去の世界、いわば、あちらから先祖の知恵や歴史を学んでいる。ヒトは、あちら側の時空から食料などの幸や、石油などのエネルギーを得て生きているのだ。マレビトとは、あちらのエネルギーの象徴そのものであった。

 
仮面の来訪神が登場する祭 
能登半島  アヘノコト 
秋田  ナマハゲ 
岩手  スネカ 
石川  アマメハギ 
山形  アマハゲ 
長野南部新野  新野雪まつり 
奄美大島  テルコナルコ 
鹿児島県甑島など  トシドン(歳神) 
八重山  アンガマ・ミルク・フサマラー・マヤの神・トモマヤ 
宮古島  パーントゥ 
西表島  アカマタ・クロマタ・シロマタ 
沖縄本島北部  海神祭(ウンガミ)・アガリの大主・ガナシ 
石垣島河平(かびら)  マユンガナシ