エピローグ
◎なぜ、日本の街は清潔できれいなのか?
カミから幸(サチ)をいただくためには、身体と生活環境を常に清浄にする必要がある。穢れ(ケガレ)をカミは最も嫌らう。伊勢神宮の20年ごとの遷宮のように建物を建てなおす習慣がある。すべてが常に新しくよみがえるシステムとなっている。スプーンやフォークは他人が使ったものでもOKだが、箸はみなさん気になりませんか?
◎大震災がきてもなぜ日本人は秩序正しかったか?
日本人は森羅万象の出来事の中に自分が含まれている感覚を持っている。大震災というカミの行為を憎まない。むしろ自然のルールに参加するのが日本人だ。これを受け入れて真面目に対応しないと、カミからのサチは期待できない。
◎日本人はなぜ親切なのか?
見ず知らずの人を歓迎するDNAを持っている日本人。日本の民話には、旅人をむげに扱って不幸になる話が多い。旅人はカミなのだから。マレビトと言う。カミを粗末に扱うとタタリがある。
◎なぜ日本の政治はだめなのか?
過去の日本の政権で本当の意味での民衆に対してリーダーシップを執った政権は皆無だ。自分たちの利害を求めて天皇の周りをぐるぐる回っているだけ。「和をもって尊しとなす」が主流だが、和の道が正しいとは限らない。織田信長はそれを超えようとしたが殺された。勤勉な民衆の生きる知恵が国と生活を支えた。
◎なぜ日本製品は優秀なのか?
手抜きは罪。仕事はカミに仕える(事に仕える)ことである。したがって、日本文化の中では仕事は労働ではない。みんなの役に立って、はじめてサチ(対価)がやって来る。基本的には現場主導だ。日本の現場のリーダーには優秀な人たちが多い。ボトムアップと課題解決の工夫に尽きる。特に持ち前の「見立て」アナロジー思考を活かした工夫や、微妙な美を感じる感性とディテールまでこだわるものづくり志向が品質を向上させている。
◎なぜ日本のポップカルチャーは面白いか。
源氏物語絵巻など絵画での物語表現や、奇想天外なからくり人形など伝統に基づく表現は、現代のポップカルチャー、漫画やアニメからフィギュアにまで通じている。同時に現代の「萌え」も「もののあわれ」「ワビ、サビ」につながっている。また現代の表現には、伝統的技法である「省略」や「見立て」、江戸時代の「モドキ」を伴った自由なポップな感覚など伝統表現のDNAが生きている。表現の中にカミが参加すること、これが日本流だ。
吉野の桜 奈良